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2005年07月12日

提示と叙述

語り手が出来事や登場人物について語るという方法には、大きく分けて二つある。
これを『小説の修辞学』(ウェイン・ブース)は、「提示」と「叙述」に分類する。

提示(showing)とは、語り手が介入して説明したりせず、黙ってあるがまま示すことである。
叙述(telling)とは、語り手が前面に出てきて、出来事や状況、人物の言動や心理、動機などについて、読者に対して解説することである。

フローベールやヘンリー・ジェイムズ以降の現代小説では、
提示の方法が重視されて、作者が姿を消した作品を、より純粋な芸術作品とする傾向もあったが、
1960年代以降のポストモダニズムの作品では、故意に語り手が物語に介入して叙述する方法により、
特殊な効果をねらうものがある。

しかしこのどちらかに傾いても、小説というものの味わいは減少してしまう。
大切なのは、提示と叙述の程よいブレンドである。

※参考
『批評理論入門』 廣野由美子著(中公新書1790)

投稿者 coboratory : 2005年07月12日 10:20