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2005年06月16日

『ウォーキング』

ヘンリー・デイヴィッド・ソローと言えば『ウォールデン・森の生活』であるが、
これはもっと簡潔なエッセイ集。
ネイチャー・ライティングの美しき見本である。
今から約150年程前の、米国ニューイングランド地方ウォルデン湖畔における自然生活。
タイトルが表すように、ただひたすらウォーキングすることが、彼の暮らしだった。

『ウォールデン・森の生活』においては、
ウォルデン湖畔での2年間の単独生活を詳細に綴った記録を残した彼であったが、
このエッセイ集では、日々思うことを淡々と書き残す。
『Walking,or The Wild』という演題での講演から書き起こされた本書であるが、
誤解を恐れずに言えば、本書におけるソローは、単なる自然主義者というだけでなく、
自然と対峙しながら自然を乗り越えてゆくべきとするキリスト者であるという側面が、
至るところで顔を出す。
それでも後に、ガンディーやキング牧師に多大な影響を与えた、
「市民的不服従」という概念をひっさげながら、
未開拓の湖畔でひきこもり生活をした彼の足跡から学ぶところは、多くある。

旅人がワーズワースの使用人に、御主人の書斎を見せてほしいと頼むと、「こちらが先生の書庫になりますが、書斎は戸外ですよ」と答えたという。
(p.12)

彼を知らない読者も、文中のこの一行から彼の思想の一端に触れることが出来ると思う。
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『ウォーキング』ヘンリー・D・ソロー著 大西直樹訳(春風社、2005)

投稿者 coboratory : 2005年06月16日 13:07